2006年3月2日木曜日

〔再録〕「国内の旅行は徒に不当なる通行税と申すものを政府に献上致すためのやうに存ぜられ、それが無念に候」〔永井荷風〕March 2, 2006


 「国内の旅行は徒に不当なる通行税と申すものを政府に献上致すためのやうに存ぜられ、それが無念に候」


先日、国内旅行はボラれるから いやだと書いた。とにかく高いのである。たしか永井荷風も同じようなことを言っていたな〜と思って探したが、その時は見つからなかった。ところが偶然今日 その文章に出くわした。荷風が大正2年に「大窪だより」に書いている。

「大窪だより」4月13日の項 を引用:
庭後子は騒しき東京の春をいとひてや、去る十日の朝夫人を伴ひ京都奈良より遠く厳島長崎かけて他郷の花 見んとて御出発相成候。われも諸共にと遊意甚だ禁ぜざりしかど、国内の旅行は徒に不当なる通行税と申すものを政府に献上致すためのやうに存ぜられ、それが 無念に候間、止むを得ざる用事の外は家を出でざる決心につき空しく黄塵の中に居残り申候、この日は古き手紙絵葉書なぞの整理に半日を費し申候。四月十三日

平成の日本には通行税はないが、形を変えた「通行税」が数多く存在する:
  1. JR料金が高い。あれは戦後のがむしゃらな地方赤字路線建設の整理のために現在の利用料金を高くしているから。形を 変えた逆進的「消費税」だ。
  2. 高速道路の通行料金が高い。もはや償却が終わっているような高速道路でも昔よりはるかに高い料金を徴収する。採算の めどが全く立たない地方高速道路の赤字を埋め合わせるためだ。これも逆進的「消費税」である。
  3. ガソリンが高い。これも逆進的税金。
  4. 温泉旅館では山盛りの食事を食べることを強要され、べらぼうな料金を請求される。欠食児童じゃないのだから、量が多 すぎるのには閉口。食事なしでは泊まれるところは少ない。これは都市から地方への所得再配分を目的としたものらしく一種の民間「地方交付税」だが、こっち の方が「再配分」して欲しいぐらいなので、近寄らない。
  5. 「ミカン狩り」とか「クリ狩り」とかが流行だが、何で自分で収穫したものに東京のスーパーより高い代金を払わんとい かんの? これも民間「地方交付税」だろう。

ということで、荷風散人のひそみに倣い、小生も「税金」を払わないために (さいわいこの「税金」には払わないというオプションがあるから)「黄塵の中に居残る」ことが多い。「黄塵の中」もけっこう面白いよ。

蛇足。「黄塵」といえば新宿。しかし最近の新宿歌舞伎町はえらく上品に なった。「歌舞伎町ルネッサンス」だって。

Posted: Thu - March 2, 2006 at 05:38 PM   Letter from Yochomachi   永井荷風       Comments (2) 

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